<Unused Ideas> 第2話 '26 大阪杯・クロワデュノール
▼「友と一番に」▼
最終的に、ロゴケイバではこのコピーを採用した。
クロワデュノールは、常に勝利を求められる存在だ。
同時に、騎手に求められる水準も、極めて高いと考えられる。
だからこそ、ファンの邪推ではあるが、いつか乗り替わりになってしまうのではないか。
それが、この大阪杯の結果で決まってしまうのではないか。
そんな不安や心配を抱えていた。
鞍上は、北村友一騎手。
昨年の凱旋門賞は14着、ジャパンカップは4着。
遠征の影響など、擁護の余地は大きく、3歳であったことも鑑みると、大健闘とも言える。
しかし、かけられていた期待を考えると、望まれた結果が出たとも言い切れない。
このコンビを見続けるためにも、ここで勝ってほしい。
ファンの間には、そんな空気があった。
けれど、今回は、単なる友情を語りたいわけではなかった。
▼欲しいのは、このコンビならではの「説得力」▼
例えば、最初はこんなコピーも浮かんだ。
「絆は、結果で証明する」
「信じた背中で、頂点へ」
しかし、これらは“置かれていた状況と結果”を説明するだけのコピーである。
誰にでも言えるし、頂点を目指すコンビならば、誰であっても、そうであるのが自然だ。
必要だったのは、“このコンビだから勝てた”という説得力だ。
このコンビがもっとも勝算が高いからこそ、乗り続ける。
そう思わせる言葉でなければならなかった。
故に、感情に寄りすぎる言葉は、すべて捨てた。
▼「星座」を配置転換▼
クロワデュノールの名前の由来は、北十字星。
だから当然、星や夜空を中心に考えたコピーもあった。
「北十字は、再び交わる」
「一番星は、友を選ぶ」など。
しかし、この系統のコピーは、すでに日本ダービーで制作していた。
同じ手法を、もう一度なぞることも悪くはない。
でも、大阪杯で実行する理由がない。
そして、繰り返すが、必要だったのは馬名の説明ではない。
“このコンビだから勝てた”という説得力だ。
故に、星座に触れるのは本文中とし、配置転換を行なった。
▼「復活」の否定▼
クロワデュノールを、「復活」という文脈で語ることもできた。
凱旋門賞14着、ジャパンカップ4着、そして大阪杯を勝った。
となれば、「帰ってきた」という言葉も候補に入る。
例えば、こういうコピーもあった。
「主役は、また立ち上がる」
「本命が、本領に戻る」
しかし、ダービー後に負けたのは、世界最高峰のレースでたったの2回。
それで復活劇として扱うなら、世の中のほとんどのG1勝利が、復活の物語になってしまう。
今回の勝利は、失った力を取り戻したものではない。
このコンビが、本来の姿を示しただけだ。
故に、復活というドラマも否定した。
▼AI時代に必要なのは、足し算ではない▼
この連載のテーマの本質は、「AIと共存するクリエイションで大事なのは、何を捨てるか?」ということである。
言葉として捨てる。
それは、それは発想を捨てると同義だ。
友情を捨てる。
星座を捨てる。
復活を捨てる。
その先に残った発想が、「友一」と「一番」だった。
こうして思いを巡らせているころ、ウイニングランのリプレイで北村騎手が、指1本を突き立てるガッツポーズをしている様子を見た。
デザインを含めて、閃いた!
▼名前を、意味へ変える▼
こうして、「友と一番に」が生まれた。
ロゴデザインは、突き立てた人差し指をモチーフにしている。
これは、信頼関係を描いたコピーだ。
“誰と共に戦うかで、走りの意味が変わる。
結果がすべての世界で、それでも、このコンビで勝つ。”
その覚悟を言葉にできたと感じた。
北村友一という名前。
そして、友と一番になるという結果。
こうした説得力があってこそ、このコピーは、“コンビ続行を懸けた大阪杯という舞台で、成立する。”
そう考えている。
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