2025 / G1 / Will

[ ロゴケイバとは]

ロゴケイバは、国内GIおよびJpnI競走、さらに日本馬が勝利した海外のG1を対象に、レース終了後、勝ち馬の名前をロゴ化して投稿するプロジェクトです。


[ Willとは]

Willは、当該レースで印象的な走りを見せた2着以下の馬をモチーフに、言葉だけで記録を残す企画です。

ロゴの制作は行いません。

あえてプレーンな文字表記にとどめ、その名前が、いつか本物のロゴが制作できる日を願って投稿しています。


「端麗な意図」


刺繍とは。

緩めれば、美は綻びる。

締め過ぎれば、布は崩れる。


レースも同じ。

絶妙なペースの緩急で成り立つ。


繊細にして、迷いなく。

一針ずつ、一瞬ごとに、

仕上げていく。


深く競馬を理解する鞍上と、

“糸”を通わせ、二冠達成。


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[補足1]

馬名エンブロイダリーの意味は、“刺繍”です。


[補足2]

ペースが遅いと見るや、自ら向こう正面で動く。

一歩間違えれば暴走に繋がる、ハイリスクな作戦です。

そこをリラックスさせ、最後の直線まで脚を持たせる。

この腕こそが、ルメール騎手の真骨頂。

特に、その妙技が炸裂したのはドゥレッツァの菊花賞かと思います。

今回は、それに並び立つ名騎乗です。


[補足3]

名手に相応しく、これでルメール騎手は、秋華賞を連覇。

さらに、秋華賞最多勝利です(4勝)。



「自走」


自分のリズムで走る。

それで、充分だ。


どこで誰と競っても、

やるべきことは変わらない。

特別な事はしていない。


世界を転戦してきた。

経験がモノを言う。


故に。

自然体こそ、最大出力。

その流儀こそ、“格の違い”。


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[補足1]

ダート超一流馬のローテーションは、いまや海外G1転戦が当たり前の時代。

本馬も同様のキャリアを歩んできたものの、今年は体調が整わず、国内ではやや成績を落としていました。

どんな世界でも、“普通のことを普通にやる”のが、最も難しいと改めて感じます。

(実際、メンバー内の実績では群を抜いていたはずが、今回は4番人気でした。)


[補足2]

さらに言えば、盛岡1600を不安視する声もありました。

しかし本馬は、かつてコース形態がよく似た東京1600で2勝を挙げており、

“普通の状態なら、なおさら負けることは考えにくい”。

そんな実績を有していました。


[補足3]

レース内容も文句なし。

スタート直後からスッと先団へ。

そのまま無理なく先頭に立ち、押し切る。

まさに、“競馬を知っている”走りでした。



「政権交代」


神は、計画を持たない。

ただ、運命の瞬間を選ぶだけ。


下界は、

想定外の閃光に驚き、

ひれ伏す。

予測も段取りも、無力だ。


雷鳴の直後。

三冠の夢は粉微塵となり、

大井の砂に飲み込まれていった。


──覇権の再構築が、始まる。


ーーーーー


[補足1]

ナルカミ(鳴神)とは、“雷神”や“雷鳴そのもの”を意味する言葉です。

その名は、おそらく父サンダースノーからの連想によって命名されたものと思われます。


[補足2]

三冠を目指したナチュラルライズですら、全く追いつけなかった圧巻の逃げ脚。

デビューからまだ1年にも満たないうちに、3歳ダートの頂点へと駆け上がりました。

本馬は、東京ダービーの時点では、まだ重賞への出走すら果たしていませんでした。


[補足3]

即興制作のロゴケイバ。

どうしても、“時勢を反映する言葉や表現”が入り込んできます。

時代の記録としても、楽しんでいただけますと幸いです。


「夢を呑む、血脈」


まるで、別次元を走っている。

同じターフのはずなのに。


勝利すら通過点とし、

親子三代で繋いだ栄光。


パリはいつも、希望で酔わせる。

だが、最後は必ず絶望へ沈める。

それが本場の美学。


残酷さにさえ、憧れてしまう。

それが本場の実力。


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[補足1]

ダリズは前走で、クロワデュノールに敗れています。

しかし、「距離が延びれば、逆転はありうる」と思わせる、負けて強しの内容でした。

そして実際に、本番できっちりと勝ち切ったのですから、さすが本場の底力です。


[補足2]

ダリズは祖母アーバンシー、父シーザスターズに続き、三代で凱旋門賞を制覇しました。

とんでもない偉業です。

なお、日本競馬における三代同時G1制覇は、たった一組しかありません。

メジロアサマ→メジロティターン→メジロマックイーンによる、天皇賞制覇です。

※天皇賞・秋が3200mで行われていた時代を含む記録です。


[補足3]

このように代々紡がれていく「血統の栄光」は、フランスの文化に例えるなら、まさにワインです。

長い時をかけて、熟成を重ねるボトルのように、深みを増していきます。

今回は、その三代の栄光を象徴する、三本のワインボトルをモチーフとしました。


「日本一、長い旅の果てに」


重圧と失望に押し潰されそうだった。

それは呪いか、試練か。


127回、歴代最多の挑戦。

8歳、高齢馬の挑戦。


積み重ねてきた、

勇気と不屈をすべて賭けて、

遂に決着をつけた。


…今日は、運命を乗り越えた日。


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[補足1]

三浦皇成騎手は、127回目の挑戦でJRA・G1初勝利。

これは、JRA・G1初勝利までに要した出走数としては、断トツ日本一の記録です。

この記録の価値は、社会人なら痛いほどに理解できるはず。

プロスポーツである競馬には、必ず投資効率と競争の力学が働きます。

つまり、どんな仕事であれ、普通はここまで挑戦させてもらえません。

ここに、三浦皇成騎手への“信頼や期待”が凝縮されているように感じます。


[補足2]

相棒のウインカーネリアンは、8歳。

なんと、コントレイル世代です。

2019年の6月9日が新馬ですから、こちらも6年の長い年月をかけてのG1初勝利です。

その上、大病の蹄葉炎まで克服しています。


[補足3]

かつては、武豊騎手の新人勝利記録を塗り替えた男・三浦皇成騎手。

一方で、今日のように晩成を感じさせる側面もあります。

晩成型の騎手といえば、南井騎手の例が思い浮かびます。

きっと彼のように、ここから「ケチャップドバドバ!」と、G1勝利を積み重ねてくれると期待が高まります。


[補足4]

中の人としては、こういう悲願達成といえば。

Foo Fightersの、Walkが真っ先に思い浮かびます。

▼初回投稿は、スプリンターズステークス▼

通常ロゴケイバ → 9/28(日)レース確定から、約120分後に投稿。

制作対象レースや企画の詳細を、画像にまとめています。

是非ご覧ください。

※海外G1の制作は、日本馬が勝利した場合に限ります。


▼その他、様々なクライアントワークやグッズ制作▼

公開可能になったものから、随時発表致します。


年末まで、どうかロゴケイバにお付き合い下さい。

先ほどの帝王賞の投稿をもって、2025年上半期・日本のG1級勝ち馬のデザインを全て投稿できました。

お付き合い頂いた皆さま、いつも本当にありがとうございます。


“ロゴケイバを見るまでが、G1”。

そんな趣旨の言葉をいただくたび、文化として根づき始めていることを実感し、嬉しく思っています。


だからこそ、たとえ完璧に納得がいかなくても、完成させる。

しっかりと意味を込める。

レースから2時間以内に投稿する。

そのための最善を尽くす。

そう、決めています。


ロゴケイバは“作品”を作ることが目的ではなく、

“文化”を作るための勝負だからです。


ロゴケイバは、来る秋競馬で4周年を迎えます。

また一つ、季節を越えることができました。

この取り組みを支えてくださる全ての皆さまに、心より感謝申し上げます。

下半期も、文化を築く歩みを止めず、引き続き積み重ねて参ります。


なお、夏競馬の期間中ですが。

・G1に限りなく近い、“スーパーG2”札幌記念。

・海外遠征馬による、G1制覇。

・ご依頼いただいた、デザイン案件のご紹介。

・その他、大偉業の達成時。

これらに該当する場合は、引き続き投稿を予定しています。

どうぞお楽しみに。



「やり返すまでは終われない」


同期は、世界王者になった。

悔しさのパンチは、重く、苦い。


…三度目のGⅠ。

今度こそ、倒れるわけにはいかない。

青春の苛立ちで固めた拳が、

熱帯夜を粉砕する。


圧倒的一番人気に応え、

彼は、更なる上の領域へと殴り込む。


ーーーー


[補足1]

強い2024年クラシック世代。

その中でも、特筆すべきは世界王者フォーエバーヤング

去年のジャパンダートクラシックにおいて、ミッキーファイトは2着に敗れています。


[補足2]

今年のフェブラリーステークスは1番人気で挑むも、敗北。

今夜、G1級を三度目の正直で勝利しました。


[補足3]

ミッキーファイトという名前にあやかり、ロゴケイバ史上初めて、明確にボクシングをテーマとしたデザインに仕上げました。

これまでロゴケイバでは、意識的に“手”にまつわる表現を避けてきました。

(掌中・掌握・手に入れる・栄光を掴む・手繰り寄せる‥など)

なぜなら、馬には“手”がないからです。

けれど今回は、ボクシングという明確な文脈のもと、デザインとして楽しむことができました。


[補足4]

これで2025年上半期のG1級レース全てを、ロゴデザイン化できました。

前半戦終了です。

ですが、今夜はもうひとつ投稿します。

もう少しお付き合いください。



「示唆の水域」


昨日を思い出せないほどの速さで、日々は過ぎる。

濁流の社会を、黙々と泳ぐ。


それでも、不意に価値観を決定するような事に出会う。

迷いの中に差し込む、一瞬の息継ぎのように。


“誰と、どう生きるか”

人生も、馬の一生も、きっとそれで決まる。


ーーーー


▼補足1▼

今日の浦和競馬場は、不良馬場。

そして、シャマルはその舞台設定が大得意です。


▼補足2▼

ご存知の通り、川須騎手とシャマルは名コンビ。

一日中乗っていると表現されるほど、調教時から人馬一体とのこと。


▼補足3▼

デザイン業界に入ったばかりの頃、ふと感じたことがあります。

「デザイナーと騎手は、どこか似ているのではないか」と。

依頼がなければ、そもそも仕事は始まりません。

そして、たとえ任されても、結果を出せなければ、次はありません。

商業の世界であり、結果がすべての勝負の場であるからです。


馬で言えば、G1クラス。

デザインで言えば、上場企業をクライアントにした案件。

それらは、特に競争が激しく、誰もが関わりたいと願う領域です。


そんな厳しい環境の中で、発注者と受注者が強く信頼し合い、長く同じ目標に向かって研鑽を重ねられるという状態になるには、偶然が入り込む余地などないはず。

「実力」として讃えられるべきだと、あらためて感じています。


だからこそ、個人的に、騎手という職業には強いシンパシーを覚えます。

中でも、川須騎手のような在り方には、ひときわ大きなリスペクトを抱いています。




「競馬の真髄」


その厳しさを知る者ほど、

気づいている。


能力だけでは届かないレベルがあり、

孤独では辿り着けないゴールがあると。


夢は、一人で見ると脆い。

だが、誰かと見ると、希望になる。


言葉を超えて、心が動く。

競馬は、“絆”のスポーツだ。


ーーーーーー


▼補足1▼

今回のデザインは、メイショウの「M」が頂点へと到達する姿を表現しています。

その頂点は、武豊騎手・石橋守調教師・松本好雄オーナーの“三位一体”によって、成し遂げられたものであることも示唆しています。


▼補足2▼

武豊騎手と石橋守調教師は、幼なじみです。

また、石橋師は武騎手の兄弟子にあたる存在です。

ただの仕事仲間ではなく、長い時間をともにしてきた間柄です。


▼補足3▼

石橋師は騎手時代、松本オーナーの所有馬メイショウサムソン号で、皐月賞・日本ダービー・天皇賞・春を制しました。

そして調教師となった今も、松本オーナーの所有馬を多く預かっています。


▼補足4▼

メイショウサムソン号が凱旋門賞に挑戦する際、松本オーナーは鞍上に武騎手を指名しました。

そのとき、オーナーは石橋師と武騎手の二人を呼び、「今回ばかりは私のわがままを聞いてほしい」と語り、騎手交代の依頼した逸話があります。

この“わがまま”の重みを、本当に理解できるようになるためには、まず懸命に働く必要があると感じます。

人に仕事を任せるとはどういうことか、人からお仕事を預かるとはどういうことなのか。

こんな人と働いてみたいと思わせる、エピソードです。


▼補足5▼

石橋師の騎手時代における、G1初制覇。

それは、メイショウサムソンの皐月賞です。

すなわち、松本オーナーの所有馬です。

そのロゴケイバはこちらから。


▼補足6▼

本馬のGallop速報フォトプラスは、6/17(火)に発売。 詳細は別途ポストします。




「容赦なき、野性」


暴走。

その姿に、後続は好機を見た。

だが、それは束の間の夢だった。


荒ぶる闘争本能は、

現実を叩きつける。


彼に常識を求めること自体が、

非常識だ。


不安要素を解決する必要など、ない。

全てを踏み潰し、物語は最終章へと進む。


ーーーーーー


[補足1]

逃げの形になってしまった、1コーナー。

気性に課題があるとはいえ、これは想定外でした。

最後の直線で捕まる!

競馬を知っている者ほど、そう思ったはずです。

それでも突き抜けたのですから、信じられません。

オルフェーヴルが2着に入った、あの阪神大賞典に匹敵するほどの“破天荒さ”です。


[補足2]

これで、堂々のダート二冠達成。

三冠ロードの最終章は、ケンタッキーダービー遠征勢との対決となるのでしょうか。

いずれにせよ、芝三冠戦線とはまた違う熱気があり、この物語は、ますます目が離せません。




「天才で終わってたまるか」


天から授かった才。

本物であると証明するには、

耐える時間が要る。


好不調の波に。

成長曲線の歪みに。

或いは、運に。


試練は、日常に潜んでいる。

けれど、それを乗りこなせた時。


天才は、天下無双となる。

今日のように。


ーーーーーー


▼補足1▼

ジャンタルマンタルとは、インドにある“天”体観測施設という意味です。


▼補足2▼

今日、安田記念・歴代最多勝を達成した川田騎手。

ジャンタルマンタルがまだ若駒だった頃、こう述べていました。

“日本で一番のマイラーになる”と。


▼補足3▼

安田記念の直前、高野調教師は語っていました。

“完成度の高い馬でしたが、さまざまな面でパワーアップしており、早熟ではありません。素晴らしい状態に仕上がっています”と。


▼補足4▼

上述のコメントから読み取れるのは、ジャンタルマンタルの才能が、明らかに突出していたということ。

それを証明するのは、“NHKマイルカップと安田記念の両方を制したのは、本馬が史上初”という事実。

この快挙は、天才であり続けることが、いかに難しいかを雄弁に物語っています。


▼補足5▼

ジャンタルマンタルの走りは、名前の響きも相まって、いつもファンクを感じるのです。

なんだか今日は、レッチリのような解釈のファンクを感じました。

今日の制作BGMはこちら。

Red Hot Chili Peppers / The Power of Equality


▼補足6▼

本馬のGallop速報フォトプラスは、6/10(火)に発売。 詳細は別途ポストします。