<Unused Ideas> 第1話 / '25 年度代表馬・フォーエバーヤング
ロゴケイバでは、毎回ひとつの勝利に対して、いくつもの言葉や切り口を考えている。
しかし、実際に世に出るのは、その中のひとつだけだ。
この連載では、あえて“採用しなかった案”に光を当てる。
なぜ、その案を捨てたのか。
なぜ、最後にこの言葉を選んだのか。
実際の2026年上半期の作例をご紹介しながら、
ロゴケイバにおける、編集と選考基準を公開していく。
AI時代のクリエイションに必要となる、制作アプローチの一例として、
お役に立てれば幸いだ。
------
▼「永久の開拓者」▼
最終的に、ロゴケイバではこのコピーを採用した。
フォーエバーヤングという名前。
そして、アメリカ・BCクラシック制覇という実績。
この2つを前にした時。
最初に浮かぶのは、どうしても「最強」という言葉になる。
確かに、最強である。
それを疑う余地はない。
けれど、競馬にはたくさんの「最強」がいる。
だからこそ、考える必要がある。
何がどうして、彼が最強なのか?
できることならば、その最強を、最強と言わずに表現できないか。
それこそが、彼の偉業を讃えることだと考えた。
------
▼最初に捨てた言葉たち▼
日本ダート競馬史において、もはや独走状態の実績。
ダート競馬の本場において、本丸を獲った馬。
ダート競馬の評価軸を更新した馬。
どれも正しい。
しかし、それらは誰もが知っている情報であって、
ロゴケイバの言葉ではない。
必要なのは、
一瞬でフォーエバーヤングを言い当てる言葉でありながら、
今までに聞いたことがない言葉だ。
だから、実績としての凄さを直接語る言葉は、すべて捨てた。
------
▼「永遠」を捨てる勇気を持つ▼
フォーエバーヤング。
直訳すれば、永遠の若さ。
当然、「永遠」という言葉は使用候補に入る。
これまでも本馬のコピーに使用してきたし、
これからも使用するであろう言葉だ。
ただ、“ダート馬初の年度代表馬”を讃える、ロゴケイバである。
そして、BCクラシックを勝った馬である。
「永遠」を意味する言葉でありながら、
より別格を感じる言葉はないか。
そこで出てきたのが、
「永久」
だった。
「永遠」よりも、記録の匂いがあり、
歴史を刻むようなニュアンスも感じる言葉である。
今回の制作テーマに相応しいと感じた。
------
▼「若さ」を捨てることで、生まれる発想▼
フォーエバーヤングという名前に引っ張られると、
「若さ」や「色褪せない存在」に寄せたくなる。
でも、振り返ってみると。
彼が成し遂げたことは、若くあり続けることではない。
ひたすら最高の栄誉を求めて、海外を転戦する。
そして、本場のど真ん中で勝ち、
日本競馬の評価基準を、外側から変えてしまう。
つまり、必要なのは「若さ」の言葉ではなく、
「フロンティア」を示す言葉だった。
先駆者。
先達。
創始者。
踏破。
始祖。
いくつもの候補がある中で、
最後に「開拓者」という言葉を選び出した。
なぜなら、フォーエバーヤングとその陣営に備わっているのは、
フロンティアスピリットそのものだからだ。
まして、フロンティアスピリットは、本場アメリカを象徴する言葉でもある。
その言葉に触れた瞬間、脳裏に浮かんだのはカウボーイハットだった。
そこに、矢作調教師のハットが重なった。
言葉だけではなく、デザインのビジョンまで一気に立ち上がった。
この言葉を選ばない理由は、もうなかった。
そして、
「永久の開拓者」
が生まれた。
------
▼AI時代に必要なのは、生成ではなく選考である▼
AIは、大量の案を出せる。
「最強」
「王者」
「伝説」
「歴史」
「世界」
「永遠」
そういう言葉は、すぐに出てくる。
でも、ロゴケイバで大事なのは。
もっと言えば、AIを取り入れたクリエイティブで大事なのは。
何を捨てるかだ。
捨てるための、判断基準は何なのか。
なぜ、その表現では足りないのか。
本当に、その言葉でなければならない理由はどこにあるのか。
そして、捨て去った先でどんなアイデアが生まれるのか。
そこにこそ、作り手の価値観や個性が出る。
クリエイションにおいて、人間とAIは対立するものではない。
主従を踏まえた上で、可能性を拡張させるものだ。
------
▼称号としてのコピー▼
「永久の開拓者」は、フォーエバーヤングという馬が、ただ強かったことを示すコピーではない。
強さだけなら、競馬史にはいくつもの言葉がある。
最強、王者、怪物、天馬、天才、英雄、皇帝、帝王etc・・・
けれど、彼が成し遂げたこととは、
既存の序列の頂点に立つことだけではなかった。
日本競馬の地図に、
まだ“誰も見たことのない領域を描き加えた”ことだった。
そして、ダート競馬を、
一年を通じて“熱狂の主役へと引き上げた”ことだった。
だからこそ、
「永久の開拓者」とは。
フォーエバーヤングという名前と、
BCクラシック制覇という実績。
そして、彼が切り拓いた新しい時代と価値。
そのすべてを込めた、彼だけの称号であると考えている。
0コメント